<An Introduction> | ||
__魔王バラモスが人間に倒された。 魔王軍全体が震撼する。 総司令官ブロス(バラモスブロス)は一人、 穴埋め対応に追われていた。 中々尻尾を出さない勇者アクシズに注意を払っていたら、 何と勇者オルテガの生存が確認されたとの報告がある。 それも、オルテガを手助けしたのは魔王軍の中にいるとも つい最近追加報告されたばかりだ。 __バラモス様までが倒されるとは……。 彼を倒した勇者は、今までノーマークだった勇者アイリだった。 一見非力に見える少女がバラモスを倒してしまった。 報告書の山にブロスは頭を抱えた。 解からないことが次々起こる。 __勇者の魂が必要ならわざわざ生かさずとも、 勇者サイモンの時のように『魂封じの牢獄』を使えばいいではないか……。 そうすれば昇天しなくて済む。 あのお方は何故こんなにも急ぐのか……。 大魔王の居城。 地下奥深く。 『うまく逃がしたか……。』 闇の中で何かの談話が行われている。 「手筈どおりでございます。」 冷たく通る声が神殿内に反響する。 「あそこでオルテガに死なれたら、我々の計画が水の泡ですからね〜……。」 「……。」 サタンは唇を噛む。 12年前に勇者オルテガと対峙し、火山口に彼を落とし勝利した筈だった。 だが、このキングという一見人間と見紛(みまご)うヒドラ族の男が、 勇者をそのまま地下世界アレフガルドまで送り込んでしまったのだ。 結果、間違いなく勇者オルテガは生きている。 この時サタンは彼等の真意が読めず困惑した。 キングは両手を翳(かざ)し、城内空中に水晶映像を映写した。 そこに映るのは一人の少女。 「こ、コイツがバラモス様を?」 サタンは勇者オルテガの娘を初めて目にして驚愕した。 「……美しいですね〜。惜しいな〜、実に惜しいな〜。 ヒドラ族だったら良かったのに……。」 「フン。嫁にでもするつもりだったのか?」 __軽い奴め……。 キングの甲高い声が癇(かん)に障るのか、サタンは舌打ちした。 「……で、どうなさるおつもりです?」 サタンは大魔王に向き直った。 闇の中で主は微笑する。 『御自ら地下世界アレフガルドへ招待しよう。 一番良い宝石は最後に取って置くものだよ……。』 闇に深い笑いが響き、また静寂が戻った……。 |
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