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マイラの宿屋の一室。
殆ど来訪者が来ない為、一人一室ずつ貸し切る形になっていた。
つまり、ココはアクシズだけの部屋になっている。
仲間達も、一人部屋だった。

「大丈夫?」

アクシズが目を覚ますと、アイリが心配そうに自分の顔を覗き込んだ。
ずっと、彼の汗を拭っていたのか、彼女の手にはハンカチが握られていた。

「俺……。どれ位、寝ていたんだ?」

上体を起こし、アクシズはアイリに訊ねる。
彼女は優しく微笑んで答えた。
「半日よ……。」

地下世界アレフガルドは闇に包まれており、
朝も夜も解からない。
だが、そのような言い方をするのなら、今は夕方か夜である。

「……ずっと、傍にいてくれたのか……?」
アクシズは、アイリの瞳を真っ直ぐ見つめた。
「うん。」
……勇者ではなく、一人の少女に戻って、素直に頷く。
そんなアイリがいとおしくなり、アクシズは彼女を抱き締めた。


翌日。
勇者アイリの背中には『王者の剣』が装備されていた。

「はい。アイリ。
 『妖精の笛』よ。」

盗賊エルマが、アイリに『妖精の笛』を手渡す。
笛はマイラ温泉付近に無造作に落ちており、
エルマの呪文『レミラーマ』詠唱で見つけたものだった。
たまたま彼女が盗賊仲間から『妖精の笛』の使用方法を伺っていた為、
見逃すことなく手に入れる事が出来たのである。

「『精霊ルビス』様を助けましょうね♪」
僧侶リオは、温泉に浸かってすっかり上機嫌になっていた。
『封印を解く』と言わず、『助ける』と言うところがいかにも彼女らしい……。

ふと、アイリは視線をアクシズに移す。
すると、彼も優しく微笑んで見つめ返してきた。
仲間達が、そんな2人に気付き冷やかすが、もう以前のような照れは無い。

__まったく、世話の焼ける奴らだぜ……。
   これから先、生きるか死ぬかの戦闘するんだから、
   いいかげんに素直になっとけっての……!!

カンダタは思わず苦笑した。

……だが。
『ルビスの塔』は、彼等にとって因縁の場所となっている。
この塔で聖なる力を封じられるのは、何も女神ばかりではなかった。
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