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「熱帯では恵みの雨なのよ♪
 確かにイシスよりはいいと思うけどね。」

両手を天にかざし、ぱふぱふ娘は元気に微笑んだ。
次に勇者アイリの方へ流し目を送り、いたずらっぽい声を出す。

「それより本当に残念。
 貴女、男の子だったら絶対可愛いと思うんだけど。」
「ごめんなさい。
 一応、これでも女の子なんです。」
男物の外套を着ていたから間違われたと思ったらしい。
アイリは徐に脱ぎながら、ムスッとした表情で言葉を返した。

しばらくして、通り雨は去り、青空が戻ってくる。
何処かへ行く予定があったのか気まぐれだったか、
彼女達の足元にずっと居た仔犬は、雨が止むと、その場から走り出す。
元気に去っていく仔犬を名残惜しそうに見送った後アイリは気を取り直すと、
ぱふぱふ娘の方へ向き直り礼を言う。

「屋根を貸してくれて有難う。
 じゃあ、私はこれで……。」

__女の子には無縁の場所よね……。

アッサラームの迷店として評判のマッサージ屋だ。(しかも夜にしか開かない。)
純真な少女であるアイリは、又聞きだったが、半ばこの店の仕事内容に呆れていた。
だが、そういう扱いには慣れていたのか、ぱふぱふ娘の明るく艶っぽい表情は消えない。

「貴女の羽織っていた外套、お父さんの……て、感じではないわね。
 兄弟、又は彼氏のかな?」

「……彼氏です!!」

機嫌を損ね、勇者アイリは唇を尖らせる。
……と同時に、屋根から雫が零れ落ち、彼女の頭に当たった。
ひんやりとした感触。
思わず宿で待たせていた仲間達の事を思い出す。
慌てたアイリは足元の道具袋を片付け、ぱふぱふ娘に一礼すると、
踵を返し足早に去っていこうとした。
そのアイリの背中へ向け、ぱふぱふ娘は大きな声で叫ぶ。

「彼氏に宜しくね〜〜〜〜!!!!
 う〜〜〜〜んとサービスしてあげるわよ!!!!」

「結構です!!!!」

いきり立ち、振り返ると、腹の底から思い切り叫び返すが、
それを予想していたかのように、ぱふぱふ娘が別の言葉を送ってくる。
意外な言葉を……。

「貴女、女の子の中でも、とっても可愛いから、自信持ってね♪」

思いもかけない褒め言葉に呆然と佇むアイリ。
その反応を確認して、ぱふぱふ娘は面白そうに笑い始めた。

__まったく、何なのよ!!

不機嫌そうに両拳を腰に当てるが、勇者アイリの頬は紅潮してしまう。

此処はアッサラームの町。
昼と夜では別の顔である。
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