季節12のお題___[夢] 不死鳥ラーミアを復活させる為には、6つのオーブが必要になる。 深夜、勇者達の船が時化(しけ)に見舞われ辿りついた先は、 ドクロ模様の禍々しい帆船が何隻も停泊している荒々しい港だった。 物は試しにと、勇者アイリがこの地で『山彦の笛』を吹くと、 オーブに共鳴したのか笛の音が木霊する。 「やっぱり、此処にオーブが在るのは確かね。」 笛を吹き終わった後も美しい旋律は乱反射するように繰り返される。 やがて音が小さくなり、すっかり消えてしまうと、勇者達の目に巨大な屋敷が映る。 屋敷は木造一階建てだが、広大な土地をスッポリ覆い隠してしまう程の広さだ。 「本当に、此処に入るんですの?」 僧侶リオが戦士クリスの後へ隠れながら勇者アイリに問うた。 彼女が怯えるのも無理はない。 屋敷は巨大だが、華麗さが微塵も感じられず、むしろ殺伐とした雰囲気である。 |
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屋敷の中では、荒々しい男達がカードを使った賭博や、大量の酒に酔いしれている。 中には喧嘩半分で真剣での打ち合いをしている者もいる。 たとえアリアハン国から来た勇者達とはいえ、 アイリとリオは、あどけなさの残る美しい少女だ。 露出度の高い女戦士クリスも含め、彼女らは男達の好奇な目に晒される結果となった。 このままでは、人間同士の闘いは避けられない。 そう勇者アイリが観念しかけ、背中に掛けた剣の柄に手を伸ばしかけた時だった。 「待ちな!! 見て分からなかったのかい!? 客人だよ!!?」 何と女性の強い口調に、屋敷中の男達が慌てて平伏したではないか。 端正な凛々しい顔立ちの美しい女性で、日焼けした肌と長い髪に、 動き易さを兼ねた露出の多い武装をしている。 年齢はクリスと、さほど変わらないであろうが、何より不思議な威厳と品格があった。 だが、王家のものではない。 「女のあたいが海賊の頭領だって可笑しいかい?」 唖然とした表情の勇者アイリを、パーティのリーダーと見抜いた女頭領は、 自信に満ちた声と表情で、質問を投げかけてきた。 しかし、アイリは戦闘中にも似た感覚で、悠然と答えてしまう。 「はい。 だって他の海賊達は男の人しか居ないし、見たところ女の人は貴女だけだから。」 この返事に他の海賊達は震撼し、思わず女頭領の顔色を伺った。 だが、予想に反して、女頭領は嬉しそうに笑っている。 「随分はっきりいってくれるじゃないか。 気に入ったよ。あんた名前は?」 「アイリ・ヴァンベルト。」 「じゃあ、アイリ。 あたいの夢は、世界一の海賊になることだ。あんたの夢は何だ? この旅の目的は?」 「私の夢は……。」 女頭領の豪快な問いかけに、勇者アイリの声が一瞬詰まる。 沈黙の後、アイリはこう告げた。 「勇者として魔王バラモスを倒し、世界を救う事。」 勿論、この答えの中に、私情は挟まれていない。 |
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