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『エリックに逢わせて……。
 早く彼に逢いたい……。』

僧侶リオが自分の姿が見え、話せそうな相手だと知って、
オリビアの霊は静かに語りかけてきた。
リオは黙って首を横に振る。
だがオリビアは首を傾げ、問うてくる。

『どうして……?』

「だって私、エリックさんの顔とか知りませんし、
 貴女に逢うのだって、今日が初めてですもの!!
 そんな状況で逢わせるなんて無理ですわ!!!!」
「リオさん、何言ってるんですか?」
負けまいと声を張り上げるリオの様子に、
オリビアの姿が見えていないのか、女性は全く意味が分からず唖然としている。
だがオリビアの霊は、落ち着いた様子で言葉を繋いだ。

『エリックに逢う事が出来たら、彼をココへ連れてきて……。
 彼は私の大切な人なの……。』

「気持ちは分かります。
 でも、逢えたら……ですわよ。
 期待しないで下さいね。」

『貴女、気が強いわね……。』

霊に意外な事を言われ拍子抜けしたリオは、やっと肩の力が抜けたのか、
冷静になって話し始める。
まるで、世間話のように。

「私だって、逢いたい大切な人がいますわ。
 私の友達・アイリだって恋人・アクシズ様に逢うのを我慢してますもの。
 アイリは、ま、だ、いい方ですわ!!
 私の場合、ディート様とまだ、恋人同士にもなってませんのよ!!?
 ソレがどんなに歯痒くて、辛いか……!!!!」

『宜しくね……。リオさん。』

不意にオリビアに名を呼ばれ、リオは驚愕して話を止めた。
気が付くと、自分と女性の2人だけになっている。
花束の置かれた岬の先端には誰も居ない。

「リオさん、大丈夫ですか?」
先程の遣り取りがまったく見えていなかったのか、女性がリオに問いかける。
頷き返すも、全身の力が一度に抜け、リオはその場にへたり込んでしまう。
だが、この時まだ、彼女は知らなかった。

オリビアの愛するエリックは、無実の罪を着せられ、
大型船を漕ぐ奴隷となり、その船は沈没して行方不明の状態だということ。
その船も『幽霊船』となり、海を彷徨い続けていること。
そして、オリビアが岬から身投げしたのは、エリックが亡くなったからだということを。

オリビアの岬では、解放されぬ魂が、今もまだ歌い続けている。
恋人との『愛の思い出』を待ちながら……。
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