季節12のお題___[雲] 地図にも載らぬ海域、厚い雲は太陽光を覆い隠し、空は暗く、波も高い。 ランシールへ向かう途中、勇者アイリ達の帆船は大嵐と豪雨に見舞われ、 そのまま風に流されるように、忘れられし孤島『ルザミ』に辿り着いた。 |
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孤島の周辺は幸いにして何事も無く、穏やかな空が続いている。 しかし無事辿り着いたとはいえ、アイリ達の使用する船は、ポルトガ国産の巨大船。 また誰か流刑にされたのかと、好奇心に満ちた住民達が集まってきたが、 彼女達がそういった事に全く無縁の人物だと分かると、 つまらなそうに各自の家へ戻っていった。 家といっても、都市でよく見かけるレンガ造りの壁とは違い、 木々を集めて建てた掘っ立て小屋のような感じである。 仕方なく船を停泊させる為、碇を下ろし、作業に勤しむ勇者アイリ達を見つけ、 冤罪で流刑なったであろう住民の男性が、人懐こそうな声をかけてくる。 「そうか、時化(しけ)に遭うとは、ついてなかったな〜……。」 「私達だって、最初は瞬間転移呪文『ルーラ』か『キメラの翼』で、 行くつもりしていたのですわ。 でも、アイリが、どうしても船で行きたいって言うから……。」 作業を手伝いながら彼に気付いた僧侶リオが、 パーティのリーダーである勇者アイリより先に答えた。 次々に嘆息する仲間達に注目され、アイリは申し訳なさそうに黙って俯いた。 本来ならば、このままランシールに直行し、 『地球のへそ』で勇者アイリは試練を受ける筈だった。 だが先日、『世界樹』の守護者であるホビット族・ゲイルから、 父・勇者オルテガが何故仲間である彼を置いて1人で行ったのか、 その理由を知ってから、彼女の心の中にわだかまりが生じてしまいスッキリしない。 __驚いたな。こんな女の子が『勇者』だったとは……。 怖気付いても、別に、責める人は居ないと思うが……。 話の一部始終を聞いた男は苦笑した。 勇者アイリは容姿端麗で凛々しくても、知らない人から見れば普通の少女である。 見守るような温かい表情になり一呼吸入れると、男は語り始めた。 「君達にとって、『勇者オルテガ』様は大切な存在なんだね。 アイリさんの話を聞いていると、よく分かるよ……。 だけど、僕にも、憧れの『勇者』様がいる。」 驚愕するアイリ達に目をやると、男は海の彼方を静かに見つめた。 その方向は……。 「もしかして、『勇者サイモン』の事ですか!?」 彼の目線を同じように追っていたアイリは、思い出したように問う。 ココからでは到底見ること不可能であるが、サマンオサ国が在る方向には違いなかった。 「そうだよ。 よく、知っているね……。」 寂しそうに微笑んだ後、彼はアイリ達に向き直り、深々と頷いた。 だが、その直後、重い表情で俯いてしまう。 勇者サイモンを知る人間の殆どは、暴君と化したサマンオサ王に処刑されたか、 彼のように無実の罪を着せられ、ルザミ島へ流刑にされていた……。 |
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