季節12のお題___[葉]

地上界。大陸北東に位置する森林地帯。
四つ岩の中央には、巨大な『世界樹』の大木が天に向かって聳(そび)え立つ。

世界樹から取れる『世界樹の葉』は、亡くなった者を蘇らせると言われているが、
そのことを知る者は少なく、一部の吟遊詩人だけが伝説として語り続けているだけだった。
ちなみに、一人の人間が、この葉を一度に二枚手に入れる事は不可能となっている。

そこから更に北へ進むと、海岸沿いに、ひっそり佇む祠がある。
祠の内部は意外に広く、外から見れば小規模の神殿に見えなくもない。
飼い猫達がのんびりと寝そべる祠の祭壇には、ホビット族の男が愛用の斧を磨いていた。
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「ゲイル……、分かってくれ。」

無心になって斧を磨き続ける仲間のホビットの名を呼び、勇者オルテガは嘆願した。

「今まで、一緒に闘ってくれたことに感謝している。
 だが、君は世界樹の守護者だ……。
 魔王討伐の旅に、これ以上君を巻き込むわけにはいかない。」

「だから、ココに残れと?」

やっと口を開いたゲイルの口調は冷ややかだった。
重い表情でオルテガは俯く。
周囲に暗い沈黙が覆う中、肩の力を抜き、溜め息をつくと、ゲイルは寂しい笑みを見せる。

「確かに、私は、世界樹を守り続けてきた一族の末裔だ。
 しかし、いくら蘇生可能な『世界樹の葉』が有るからといっても、命は大切なものだ。
 決して無駄にしてはならない。」

だから旅に同行させろと言うのが彼の考えなのだろう。
だが、勇者にも言い分があった。
真剣な眼差しで、勇者オルテガはゲイルの瞳を真っ直ぐ見る。

「私は、アリアハン国王の命令で、世界を救おうとしているのではない。
 戻るべき場所に居る、家族の為だ……。
 だが、いかなる理由であろうと、命を奪う闘いは良くないものだし、
 勇者だからだとか、正義という言葉で正当化してはならない……。」

祠の外で風が起こる。
大森林の木々が擦れ、光と影がバラバラに交差する。
その様子を内部から眺めながら、勇者は微笑んだ。

「血で手を汚すのは、私一人で十分だ……。」

だから生命の源である世界樹を守る者を汚してはならない。
言い返せず黙ってしまった友の表情を確認したオルテガは、
徐に荷物をまとめると、踵を返し、祠を跡にした。

ゲイルの立場と自分の立場に光と影を重ねながら……。

それから数年後。
勇者オルテガがネクロゴンド火山火口に落ち、
戦死したという悲報がゲイルの耳にも届く。

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