季節12のお題___[休]

太陽が沈むと夕暮れが終わり、外は闇夜に包まれ、空には星が点々と増え始める。
冷気と共に厚い雲が星空を覆い隠し、粉雪が視野を囲む。

一方、奪還を喜ぶサマンオサ城では、宴も終わり、
会場の片付けも着々と進められていた。

__アクシズは、結局戻って来なかったか……。

軽い溜め息を漏らすと、サマンオサ王は最上階バルコニーの手摺に手を置き、
ぽつぽつと明かりの灯り始める城下町を見下ろした。
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彼が後方の気配に振り向くと、大臣が心配そうにコチラを見ている。
「陛下、そろそろお休みになられませんと……。」
「そうじゃな。今、行こう。」
言って、紅いローブを翻すと、徐に王は自分の部屋へ戻ろうとして、ふと、足を止めた。
そのままの状態で首だけ大臣の方へ向く。

「お前達。
 ワシに何か、隠していないか?」

思いがけない問いに、一瞬眉をひそめたが、大臣の微妙な反応は闇夜に映らない。
彼は平然と返す。
「いえ、何も隠しておりませんが。陛下もお疲れなのでしょう。
 約10年以上も地下に幽閉されて疲労の無い者などおりますまい……。」
「……うむ。」

釈然としなかったが、王は仕方なく返事した。
10年以上も幽閉されていたので、今現在の国の状況が把握出来ない。
おまけに成長したサマンオサ出身の勇者・アクシズは、
彼自身の父親・勇者サイモンを捜しているらしい……。
確か地下牢から解放される前、アリアハン国から来た勇者アイリから、
「勇者サイモンは遠い所へ行っていて中々戻れない」と聞いていた筈なのだが……?

__分からない事が多すぎる……。

これから降りかかるであろう国の問題を1つ1つ解決していこうとすれば、
多大な労力を要することが予想される。
国民は平和になったと喜んでいるが、国を束ねる王は暢気に喜んでいられないらしい。
それは、臣下達も同じことだった。
苦笑しながらの声で、大臣が語りかけてくる。

「政(まつりごと)は、我々にとって、他人事には済みませぬ……。」
「……そうじゃな。」
「陛下。お休み下さいませ。
 明日から忙しくなりますゆえ……。」
「……そうじゃな。」

彼に向かって同じ返事を繰り返すと、サマンオサ王は自分も苦笑した。

__我々には、この生活が普通なのだ。

ならば、勇者達が取り戻した平和を守り続けねばならない。
振り返り、もう一度、テラスから静かに眠る城下町を眺める。
そして踵を返すと、自分も眠る為、王は自室に戻った。
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