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__『約束』……。

サマンオサ城下町。
宿の一室。
ベッドに座ったまま、アイリは自分の右手小指を見つめていた。
数時間前、アクシズと逢引する為、彼女は宴から抜け出し、
そして「また会おう」と、彼と小指を絡め合い『約束』をした。

約束は果されるのか、あるいは果されないのか、現時点では分からない。
だが、アイリにとっては永遠の約束だった。
どうしても叶えたい約束だった。
彼女の口元に、どこか哀しそうな微笑がこぼれ、気を抜くと涙が溢れそうになる。

「難しい立場ですわね……。」

聞き慣れた声に振り返ると、僧侶リオが心配そうにアイリを見つめていた。
アイリは指で自分の涙を拭うと、無理に笑顔を作る。
「仕方ないわ……。
 彼も、『勇者』だもの。
 ……一緒に居たいと思っていても、互いの使命を果すまでは……。」
「それじゃ、不公平ですわ!!」

いきり立ってリオが抗議する。
驚愕し、狼狽するアイリに、彼女は更に詰め寄った。

「アイリは『女の子』ですのよ!?
 好きな人と一緒に居たいって願って、どこが悪いんですの?
 いくら『勇者』だからって、そんな考え……哀しすぎます……。」

喉奥から振り絞るような声で言った後、俯き、唇を噛み締め、瞳に涙を溜める。
幼馴染ゆえ、見抜かれているのか、
自分の心の深い部分を代弁してくれるようなリオの言葉に、内心ドキリとしながらも、
アイリは苦笑した。

「私は、大丈夫。慣れているから。
 それに、このアプローチ……。彼からなの……。」
「え?
 あんなに奥手で恋愛に興味なさそうな朴念仁に見えましたのに!?」
「……そ、それは、言い過ぎなんじゃ……。」
「そうですわね♪
 アイリも人のこと言える性質(たち)ではないですし。」
「リオもね。」

いつの間にか言い合いになっている事に気付き、
少女達は互いに顔を見合わせ笑い出した。
その時、戦士クリスが部屋に戻ってきた。
両手に大量の酒瓶を抱えてだったが……。
狼狽しながらアイリが問うと、クリスは誇らしげに答えた。

「宴のをくすねてきた。
 もちろん美味いのだけな♪」

__明日、二日酔いにならないでよ……。

緊張感の抜けた仲間の行動に呆れつつ、アイリは自分の右手小指に視線を移す。
そして、温かく微笑んだ。

__また、会おうね。アクシズ。
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