季節12のお題___[雪]

勇者オルテガの娘であり、アリアハン国出身の勇者アイリが、
サマンオサ国をボストロール(偽サマンオサ国王)の脅威から救った。

そして、その晩。
王城では、宴が開かれ、英雄である彼女も参加する事になっていたらしい。
だが、城内会場では、その姿が見つからず、
勇者アイリの仲間達は、彼女を捜し回る羽目になっていた……。
<1>
「もう、勇者アイリ様ったら、何処へ行ってしまわれたのかしら……。」

口元に手を当て、サマンオサ王女が溜め息をつく。
一方、心当たりがあるのか、すっかり正装をした僧侶リオと、
戦士クリスは互いに顔を見合わせ苦笑した。

この国には、他にも『勇者』が居る筈なのだが、城内の者達は気にしないらしい。
ただ1人、彼を知る国王を除いて……。

リオが、そ〜……っと、小さな声でクリスに耳打ちする。
馴染みの薄いサマンオサ国内で、他にアイリの行きそうな場所といえば……?

「きっと、勇者アクシズ様の所ですわね……。」

同意するかのように瞼を閉じ腕組みしながらクリスは頷いた。
「まったく……。
 アイリも分かり易い奴だな……。」

「仕方ないですわよ。
 恋愛に関しては『百戦錬磨』じゃありませんもの。」

「ひゃくせんれんま?」

「簡単に説明すると『恋愛に慣れてない』という事ですわ。」

自分の事は棚に上げて、自らの恋愛論を語り始めるリオに狼狽しながらも、
クリスは大窓に視線を移し、嘆息した。

サマンオサ国は南の大陸に位置するものの、山岳地帯に囲まれた盆地の中に在る。
気候は冬。
空には厚い雲がかかり、今にも雪が降り出しそうだ。
城内外に出ていた、アイリは宴の衣装のまま、
自らの両指先を口元に近づけ、暖かい息を吐きかける。
息は白く染まり、身を切る寒さに思わず、城内に外套を忘れてきた自分自身を後悔する。
だが、心の底では彼女には淡い期待があった。
二の腕を抱き締め、口元は震えながらも、
その足は城下に在る『武器防具屋』の方へと向かっている。

__アクシズ、居るといいな……。

その表情は自然と微笑みに変わる。
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