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__バサラのオッサンが変な事言うから、妙に気になって仕方ないじゃないか……!!

武器防具屋の1階。
旅の身支度を整えつつも勇者アクシズは、
宴に招待された勇者アイリの事が気になって仕方がない。

しかし本来ならば、父の跡を継いで
『サマンオサ国所属の勇者』になる筈だったアクシズは、
何とサマンオサ王直々の誘いを断ってしまった……。
周囲は驚愕したが、中でも一番驚いていたのはアイリだった。
しかも宴に参加せず、城の人間との交流も絶ってしまったのである。
まあ、彼の性格が『一匹狼』だからと言ってしまえば、元も子も無いのだが……。

夜間でも開いているのか、武器屋の店主は2階で売り物である武器を陳列していた。
しばらくして暇になってしまったのか、
店主は階段を下りながら手すり越しにアクシズを見下ろし、彼に話し掛ける。

「よう、アクシズ。
 やったじゃねえか!!
 さすがは勇者サイモンの息子だな〜〜♪」

階段を下り終えると、店主は満面の笑みを浮かべ、彼の背中を思いっきり叩いた。
思わず咳き込みながら、アクシズは店主を静かに睨みつける。

「サマンオサを救ったのは、俺じゃない……。
 アイリだ。」

__彼女が居なければ、『ラーの鏡』を見つける事は出来なかった。

悔しい訳では無いが、複雑な気持ちだった。
アクシズはアイリに恋心を抱いている。
アリアハン国の勇者が男性だったら、こんな気持ちにはならなかっただろう……。
『国所属の勇者』に何のためらいも感じず、サマンオサ王の誘いだって受けただろう。
だが、彼はその事に疑問を感じ、断ってしまった……。
だから現在、勇者アクシズは無所属である。

狼狽した武器屋の店主は、訳も分からず額に汗を浮かべ、ごまかし笑いを見せた。
「まあまあ……、落ち着け。
 お前さんも、いきなり強敵(ボストロール)と闘って疲れてんだろ?
 お目当ての、アイリお嬢さんの心も射止めたそうだし、収穫の方が多いじゃねえか!!」
「な……!!」
言われて思わず顔が熱くなる。
外は雪が降りそうな程寒いが、アクシズは照れの為、全身に汗をかく。
彼の狼狽振りに思わず店主の口から笑いがこぼれる。

その時、外から扉を叩く音がした。
後頭部を掻きながら、面倒くさそうに、武器屋の店主は扉を開ける。
しかし、来客の顔を確認すると、ニヤリと笑ってこう言った。

「これは、これは、お嬢さん。
 出入り口を間違えたね。
 武器屋は2階だよ?」

確かに、ココの武器屋は2階が店舗になっている。
だが、目的が違うのか、アイリはゆっくりと首を横に振る。
そして……。

「分かってます。
 ね、アクシズ。」

扉向こうに居る、アクシズに視線を移すと、愛らしく微笑んだ。
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