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「世界を救う旅かい。
 あんたも、凄いじゃないか。
 あたい達、いい友達になれそうだね。」

勇者達は上機嫌の女頭領により大部屋へ招かれ、ご馳走を振舞われていた。
久々の、マトモな食事だったが、周囲の荒々しさに、お嬢様のリオは食が進まない。
一方、クリスは久し振りの酒に喜んでいる。
アイリは、食事に手を伸ばしながらも、さっき自分が言った言葉に後悔の念を抱いていた。

__私の本当の夢は、そうじゃない。

勇者ゆえに、本心を告げられない自分が辛かったが仕方ない。
父・勇者オルテガの跡を継がせると決めたのは母・ルシアだったが、
『地球のへそ』で問われた時に、自分で決めたと答えたからだ。

__もっと、普通の女の子が抱く小さな夢。

思考に邪魔され、食事をしていたアイリの手が止まった。
その様子に気付いたのか、海賊の女頭領は、
自分の後頭部を掻きながら苦笑して語り始める。

「まあ、アイリ。
 あたいが、こう言うのもなんだが、夢ってのは1つだけじゃないだろ?
 大きくても小さくても、何個あったって構わない。
 そうじゃなきゃ夢破れた人間は、毎回立ち直れないだろうしさ。」

思わず顔を上げるアイリに、今度は別の海賊が人懐こそうな声をかけてくる。
「お頭の夢も、昔から多かったですからね。
 さっきの夢は、ほんの一部ですよ。」
「こ、こら、ソレは言わない約束だろ!!!!」
拳で部下を小突き、女頭領は狼狽する。
その遣り取りに温かいものを感じ、アイリは微笑んだ。
だが、余計な事は話さない。

__だって此処で言える訳ないわ。

食事が済んだ後、すっかり海賊達と打ち解けた勇者達は、
倉庫に保管されていた『レッドオーブ』を無事手に入れることが出来た。

海賊達と別れた後、船は更なるオーブを手に入れる為、次の地を目指す。
幸い魔物とも遭遇せず、穏やかな航海となった。

アイリは甲板に立ち彼方を見つめた。
ふと感じた気配に振り向くと、リオが微笑んで立っている。
そう、アイリの本当の夢を知っているのは、幼馴染であるリオだけだ。

「まだ、誰にも言わないでね。」
「わかっていますわ。」

少女2人は、互いに顔を見合わせ微笑んだ。
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