__俺の父・勇者サイモンは既に死んでいた。 俺はハンター稼業を営む傍ら、三つの大きな目的を抱えていた。 一つ目の目的『サマンオサを救う』は無事達成された。 だが、二つ目の目的『親父を探す目的』は最悪の結末を迎えることになった。 そして、三つ目の目的『地下世界の大魔王を倒す』だけが決行されていない。 そう。 もう、俺が地上界にいる必要は無くなった訳だ。 |
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「お前、魔物ハンター辞めちまったそうじゃねぇか!!」 『ギアガの大穴』。 さっそく着いたのは良かったものの、体躯の先客が待っていた。 しかも俺が立たせておいた警備兵が、縄で縛られ捕まっている。 「アクシズ様、スイマセン……。」 「いや、いい。 アレはお前じゃ防げない。」 開放され項垂れる警備兵を励ます。 __しかし、ひどいことをする!! 「カンダタ……。」 俺はカンダタを睨み付けた。 当の彼は「やれやれ」と肩を竦ませ、全然悪いとも思っていないようだ。 「何で色男のお前さんが、魔王バラモス討伐に一切加担しなかったか解かったね。 そちらの図体のデカイ魔物さんまで仲間にしちまっているって訳だ。」 自分より更に大きい仲間のエビルを見上げて、カンダタは感心する。 「……だが『ガイアの剣』をアイリに渡したのは頂けなかったなぁ〜? あの姉ちゃん方、あのネクロゴンドを突破しちまったぞ!!」 「親父の遺志だ。」 俺が真面目な顔で言うと、今度は賢者ディートが言葉を続ける。 「僕らはエビルのおかげで、『ギアガの大穴』に来られました。 彼女達はきっと『別の移動手段』を手に入れたのかもしれない。 ……確かに、アクシズの慈悲深い性格では、 エビルの同族であり親戚である魔王バラモスは倒せない。」 「まあ、そんなだから。 あたし達は、そんな勇者の仲間なんだけどね。」 エルマが肩を竦ませ、いかにもと発言した。 エビルも頷いている。 「……で、『ギアガの大穴』の中に何があるんだ?」 カンダタが聞いてくる。 「お前には関係ない!!」 俺がきっぱり告げると、彼は俺の胸倉を強引に掴み、顔を近づけてきた。 「関係ない……じゃねえよ!!」 「……手を離せ。」 「いったいこの中には何が待ってる!? 何で、こんな城壁まで建ててコイツを守ってる!? だって、ソコから出てくる黒い気体が周囲を死なせているんだぞ!! アクシズ、お前何者なんだ!?」 「いいから離せ!!」 俺は、力を込めて問い詰めてくるカンダタの手を振り払った!! 確かに『ギアガの大穴』から流れ出てくる闇が、周囲の環境を死滅させているのは事実だ。 いつも一番敏感な自然が、最初に異変の影響を受けてしまう。 「魔王バラモスは代々魔王として地上界に君臨していた。 俺には彼自身が人間や自然を破壊しているとは、どうしても考えられない。 事実バラモス族は、バラモスエビルのように天界をも行き来できる。」 戦士カルロスと、その恋人サブリナは、直接魔王バラモスに闘いを挑み、 呪いを受けたが、その命まで取られた訳ではない。 テドンは、『死神』と称される人型の魔族によって惨殺されている。 別の力がどこかで働いているとしか俺には考えられない。 既に竜の女王から事の真相を伺った俺は、魔王バラモス討伐を辞めた。 無駄なことだと感じたからだ。 |
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