__俺はどうして旅を続けてきたのだろう……。 人は、時として道を見失うことがある。 挫折。別れ。そして、とある目標の喪失によって。 |
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サマンオサの共同墓地。 俺は、またココに戻って来ていた。 __……。 喪失感と焦燥感。 俺は、この負の感情の為、既に2件のギルド依頼を断っている。 各ギルドの元締め達が俺を心配して、 今回ばかりは仕事を見合わせてくれたのだが……。 __また、俺が戻るとでも思っているのか。 「アクシズ……。」 アイリか……。 だが、俺は振り返ることが出来なかった。 「すまない……。 独りにしてくれないか……?」 「ごめんなさい……。」 俺の棒読みの冷たい返事に、アイリは消え入りそうな声で謝る。 謝る必要ないのに。らしくないな、俺は……。 __話は少し前に遡る。 珍しくギルド元締めから直接依頼を渡された日。 アイリが再び俺の前に現れた。 話を聞くと、ずっと俺を捜していたのだという。 つまり、アイリが俺への依頼主となっていたのだった。 「こうでも、しないと、なかなか貴方を見つけられないから……。」 そう言って、彼女はどこか寂しそうな笑みを見せた。 その手には、一本の剣と包みを大事そうに抱えている。 剣の方は、俺も見覚えがあった。 「『ガイアの剣』?」 その剣の名を言うと、アイリは頷き俺に手渡す。 鞘から抜く。 __……!? 俺の血に呼応するように、刀身から炎が上がった。 「やっぱり、『貴方の剣』なのね。 私ではそんな風にならなかった。」 アイリが納得したように呟いた。 それは俺の勇者の血筋がそうさせているのだが、 勇者といってもアイリの勇者の血筋と異なるらしい。 彼女にも、きっと相応しい剣がある筈だが、 勇者オルテガが持っている可能性だってある。 『ガイアの剣』はまだ親父の物だ。 俺は継承権を受けていない。 しかし、俺はもうひとつの『包み』に気を取られていた。 「どうして、コレを……?」 「勇者サイモンに会ったの。」 「!?」 アイリは徐に包みを俺に渡した。絶対開けてはならない……、そう言って。 「サイモンさんは、私のお父さんと一緒に闘う約束をしていたの……。 でも、行けなかった……。 サイモンさん、お父さんに『ガイアの剣』を渡してくれって。 でも……。」 アイリの父親も既にこの世にいない。そして、親父も結局……。 俺は駄目だと解かっていても、包みを開けた。中身を一瞬確認したあと、包みを元に戻す。 __親父の遺骨。 「……ありがとう。」 俺は俯いたまま感謝を述べた。そして『ガイアの剣』をアイリに渡す。 「これは、あんた達が持って行ってくれ。 そのほうが父も本望だろう……。」 俺の口から出たのは、あまりにも他人行儀な台詞。 彼女は一瞬悲しそうな顔をしたが、力強く頷いた。 「アクシズ……。 ……私達と。」 「俺は一緒に行けない。」 アイリの言葉を遮るように俺は口を開いた。言葉を失って驚愕する彼女に更に続ける。 「目的が違う。 俺は他の勇者達と同じ使命を持っていない。」 __地下世界の大魔王討伐。それが俺の使命。 しかし、言ってしまって心が痛かった。 彼女が勇者の意志とは別の、切ない瞳で俺を見つめていたから……。 |
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