砂漠の国イシス。
不思議な事件とは、ロマンチストだけの特権だと思っていたら、そうでもないらしい。

「アクシズ。
 あんた、全く自覚無いんだから少しは気をつけなさいよ!!」
依頼を持って来たエルマが言う。
今思えば、この忠告を聞いておくべきだと後悔するのは、ずっと後のことだった。
<1>
サマンオサでアイリと別れてから、俺は次にイシスからの依頼を受けることになった。
確か、ここは女王の統治する国だと聞いたが……。

「遠いところから、よく来て下さいました。」
側近の次女が俺を出迎えた。
心なしか城内へ入ったとたん、複数の視線を感じるのだが……?
見回しても女性ばかりで男性の姿が少ない。
……と言うか、兵士も女性だ。

「あの方がアクシズ様?」
「素敵な方ですわ〜♪」
「わあ、私にも見せて。見せて♪」

__……!?

……と、とにかく居心地が悪い。
とっとと依頼遂行して帰ろう。
俺はもう半分帰りたい気持ちで謁見の間に通された。
実際にイシス王城へ入るのはコレが初めてだったりする。

__しかし、何で『(俺)一人で来い』という条件なのか……。

考えを巡らせていると、さっそく女王が現れた。
次女の話によれば、年齢は俺の少し年上らしい。
まあ、世界的に美しいとは評判らしいけど、それは人によりけりだからなあ……。
女王は何故か部下を全て引かせ、謁見の間には俺と彼女だけになった。

__よほど、難しい依頼なのか?

最近、魔王軍の侵略も手荒くなっている。
しかも、このような大国であれば狙われないほうがおかしいだろう……。

「よくぞ来て下さいました。」
「では、ご依頼の方を……。」

__?

な、何か変だぞ?
俺が狼狽するのも無理ない。
何と彼女は俺の顔に手で触れてきたではないか……!!
彼女の顔が近づくや否や、俺は咄嗟に後ずさった!!
「何故避けるのですか?
 皆(男の人は)喜んでくれるのに……。」
「この場合、避けるのが普通でしょう!!」
俺は激しく抗議するが……。
……て、ちゃんと聞いてますか?
「そうですね。貴方と私は初対面ですものね。」
……お〜い……そういう意味じゃなくて……。

「あの、すいません。
 依頼の内容を『手短に』お願いします……。」
……ついでに変なことも止めてください。

「護衛をお願いしたいのです。」
「護衛?」
やっとまともな話題になった。
「何処までですか?」
「何処まで行きたいですか?」
「冷やかしなら俺、帰ります……。」
「ああ、冗談ですわ!!
 待って下さいませ!!」
リオの上行く天然だな。この女王様。

「勇者アクシズ様。
 私のこと、嫌いですか?」
「はぁ!?」
……何言ってんの、この人!?

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