__最初から、こうしとけば良かったんだよ……。

「アクシズ。
 今回はスゴイ所からのご依頼よ。」
エルマが何時にない深刻な表情で、俺にこのミッションをよこした。

依頼主は……。
「依頼主は、サマンオサ王よ。」
<1>
故郷に戻るのは約10年振りだろうか……。
しかし……。

「よう来てくれたな……。
 アクシズ。」
サマンオサ城、謁見の間。
サマンオサ王が優しい言葉に似合わず冷酷な目で俺を見ていた。

__……まるで、俺が『ココに来ないとでも思った』ような口調だな。

……そう。
俺は一度、ココから逃げている。

「そう、肩を張るな……。」
……やっぱ、分かりますか……。
俺が自然に警戒してんのが……。
ため息をついたが、出来るだけ平然と振舞う。
「ご依頼内容は……。」
「うむ。よくぞ聞いてくれた。」

王は、満足そうに自分の口ひげを梳く。
「つい最近な?
 鼠が一匹逃げおった。
 その鼠を捕らえて連れて来て欲しい。」
……それは、大きな鼠だな。
要するに脱獄者を連れて来いとの依頼だった。
「鼠には、あと二匹仲間がおっての。
 皆、地下でおとなしくしておるのに、一匹だけ肝心の奴が逃げたんじゃ。」

「その逃げた者の手がかりは無いですか?」
「名前だけははっきりしとるよ。
 勇者アイリじゃ。」

__……そうきたか。

「成功報酬は。」
「お前の父、勇者サイモンの所在とでも言っておこうか?
 これ以上の報酬は無いだろ。
 勇者アクシズ……。」
……既に、俺に選択の余地は与えられなかった……。

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