<2>
__嫌な仕事引き受けちまったかな……。

俺が共同墓地へ向かうと、なんとアイリがそこにいた。
あまりのあっけなさに呆れたが、
彼女の話では地下牢獄から墓地へ通じる抜け道があるという。

武器屋の一階。
俺は、そこでアイリを一旦匿うことにした。

__アイリを引き渡せば、親父の居場所を教える…か……。

俺のそんな悩みなど知る由もない。

「それでね。
 『ラーの鏡』の場所を知っている人に会ったの。
 その人、牢獄に捕まってたけど。」
アイリの口から止め処なく重要事項が発せられているが、俺の目線は違うところにあった。

__雰囲気が違う…?

そう。
何か大人っぽくなったような。
以前から彼女は美しかったが、更に増した気がした。
整った顔立ち。
細い女性らしい肢体。
……。

「?」
アイリが視線に気付いて不思議そうに俺を見た。
刹那……。

止められなかった。
既に俺の唇は、彼女の唇に重なっていたのだ。
俺は遂に彼女に触れてしまった……。

……瞳が潤んでいる。
や、やばい、今にも泣きそうだ……!!

「ご、ごめん。
 ごめん!!」
咄嗟に逃げ出し、隣の部屋に足早に移動。
そして、しゃがんで頭を抱え、……とても後悔した。

__アイリの気持ち、考えてなかった。

「お、アクシズ。
 何かしたのか?」
武器屋のオヤジが声をかけてくる。
「ほっといてくれ……。」
「まあ、おめえも男ってこった!!」
褒めてんのか?
それ。
「ほら。
 熱々のスープ持ってきてやったから飲め。」
俺はオヤジさんからマグカップを受け取り、立ち上がった。

一時間位経って、ようやくアイリが部屋から出てきてくれた。
……が、しかし……。

「……。」
無言で目を合わせてくれないばかりか、何だ!?
この一定の距離感は……!?
駄目だ……。自分が情けなくなってきた。

アイリは俯いたまま食卓に腰掛けた。
「冷めないうちに、ほらよ。」
「あ…、ありがとうございます…。」
彼女はマグカップを受け取り、やっと微笑んでくれた。
オヤジさんが今度は俺の方を向く。

「……で、どうするつもりだ?
 いつまでもココに匿っとくわけにはいかないだろ。」
「ああ。
 とりあえず、その『ラーの鏡』を探しに行こうと思う。
 その場所だけど……。」
俺が視線をアイリに移すと、彼女は俯き目を逸らしてしまった。
……避けられている。

オヤジさんが俺の肩に手を置き、無言の励ましを送ってくれた。
元気出せ……て、感じか。

次へ
前へ
DQ3外伝『小説』CONTENTS