呪文は本当に便利だ。
事実、俺にとっては日常生活に欠かせない能力となっている。

数々のミッションをこなすうちに、世界各国を縦断する形となったから、
瞬間転移呪文『ルーラ』を覚えるようにしたのもその為だ。
勇者という職業は、基本的に何でも覚えようと思えば、
覚えることが出来るから便利だったりする。

だが、その呪文も使用方法を誤れば
リバウンド(外的効力が自分に跳ね返ること)を起こす……。
<1>
「お前の所で片付けられるだろ?
 国所属の勇者だっているんだし。」

「連れないわね〜。アクシズ。」

ルイーダが俺に流し目を送る。

俺は今、アリアハン国のルイーダの酒場に呼ばれていた。
ルイーダの酒場では、各国からの強者が登録している筈なのだが……?

「あんたもウチで登録してくれたらいいのにさ〜。
 そしたらウチの評価も上がるのに……。」
「ルイーダ。俺は、呼ばれて誰かの旅にノコノコ付いていくタイプじゃないんだよ。」
「アクシズ。また腕上げたんじゃない?
 今、あんた各国ギルドで引っ張り凧でしょ。
 家柄も良いのに、ハンターやってるって有名よ。」

確かに『クライン』家は代々勇者の家柄だから、
ラストネーム(苗字)言ったら何処行ってもバレるんだ……。

ルイーダと話しながら、俺は登録名簿を暇つぶしにパラパラめくる。
そういえば、勇者アイリの名前も無いような……。
「アイリも登録していないじゃないか。」
「あの子は、アリアハン国所属の勇者だからね。
 『ヴァンベルト』家は代々勇者で雲の上の人なの。
 あんたと同じく相当身分の高い奴は入ってない。」
「……あ、そ。」
だから、大臣の孫娘・僧侶リオの名前も無かった。

「……で、依頼は?
 相当手古ずってるんだろ?」

俺が話題を切り替えると、ルイーダは一枚の報告書を出してきた。
報告書の内容は……。

__ドラゴン出現の緊急避難報告……?

「アリアハンにも、ドラゴンが出るのか?」
「う〜ん。一匹だけね……。」
「しかも、この報告書、国防から出ているじゃないか!?」
「だから、報酬金も法外よ。
 でも、あんたの銀行の預金算高、オーバーしているそうじゃない?
 それでもやってくれる?」

__う〜ん。確かに。最近無償みたいになってるもんな〜……。

「使う宛も無いし、孤児院の施設にでも寄付しとくよ。
 確かにこの名簿のレベルじゃ相手出来ないだろうしな……。」

俺はルイーダに名簿を返すと、引き換えに報告書を受け取った。

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