呪文は本当に便利だ。 事実、俺にとっては日常生活に欠かせない能力となっている。 数々のミッションをこなすうちに、世界各国を縦断する形となったから、 瞬間転移呪文『ルーラ』を覚えるようにしたのもその為だ。 勇者という職業は、基本的に何でも覚えようと思えば、 覚えることが出来るから便利だったりする。 だが、その呪文も使用方法を誤れば リバウンド(外的効力が自分に跳ね返ること)を起こす……。 |
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「お前の所で片付けられるだろ? 国所属の勇者だっているんだし。」 「連れないわね〜。アクシズ。」 ルイーダが俺に流し目を送る。 俺は今、アリアハン国のルイーダの酒場に呼ばれていた。 ルイーダの酒場では、各国からの強者が登録している筈なのだが……? 「あんたもウチで登録してくれたらいいのにさ〜。 そしたらウチの評価も上がるのに……。」 「ルイーダ。俺は、呼ばれて誰かの旅にノコノコ付いていくタイプじゃないんだよ。」 「アクシズ。また腕上げたんじゃない? 今、あんた各国ギルドで引っ張り凧でしょ。 家柄も良いのに、ハンターやってるって有名よ。」 確かに『クライン』家は代々勇者の家柄だから、 ラストネーム(苗字)言ったら何処行ってもバレるんだ……。 ルイーダと話しながら、俺は登録名簿を暇つぶしにパラパラめくる。 そういえば、勇者アイリの名前も無いような……。 「アイリも登録していないじゃないか。」 「あの子は、アリアハン国所属の勇者だからね。 『ヴァンベルト』家は代々勇者で雲の上の人なの。 あんたと同じく相当身分の高い奴は入ってない。」 「……あ、そ。」 だから、大臣の孫娘・僧侶リオの名前も無かった。 「……で、依頼は? 相当手古ずってるんだろ?」 俺が話題を切り替えると、ルイーダは一枚の報告書を出してきた。 報告書の内容は……。 __ドラゴン出現の緊急避難報告……? 「アリアハンにも、ドラゴンが出るのか?」 「う〜ん。一匹だけね……。」 「しかも、この報告書、国防から出ているじゃないか!?」 「だから、報酬金も法外よ。 でも、あんたの銀行の預金算高、オーバーしているそうじゃない? それでもやってくれる?」 __う〜ん。確かに。最近無償みたいになってるもんな〜……。 「使う宛も無いし、孤児院の施設にでも寄付しとくよ。 確かにこの名簿のレベルじゃ相手出来ないだろうしな……。」 俺はルイーダに名簿を返すと、引き換えに報告書を受け取った。 |
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