悪いのは魔王ばかりではない。
人間が原因の悪事も多々存在する。

__もし本当に人間が悪い場合、いったい誰が取り締まるのか?

俺達、勇者の最大の課題でもある訳で……。
<1>
「頼む!!」

俺はディートに拝みながら、ミッション同行をお願いしていた。

先ずは彼の紹介をしておこう。
『ディート・エレメスト』は俺の幼馴染で、同じ20歳。
ダーマ神殿、バサラ・エレメスト大神官の次男坊で、
職業も『賢者』とエリート中のエリートである。

……て、説明口調も結構恥ずかしいものだが……。
俺の柄じゃないし。
まあ、気を取り直して……。

俺はポルトガの依頼で『しびれくらげ』退治を引き受けた。
だが、その数半端ではなく、
雑魚モンスターも1000匹揃えば脅威になる。
一度は退散する形を取ったが……。

__とりあえず、麻痺回復呪文『キアリク』が欲しいな。

……と言う訳で、一旦このミッションを保留にして、
『キアリク』が使える奴を呼びに行ったのだった。

その賢者ディートだが……。

「駄目ですよ。
 僕が事務作業忙しいの、見て解かりませんか?」

確かに、彼のデスクは書類が山積みで、
収集がつかない状態になっている。

「最近、転職者が多いから、
 職務履歴変更を各地のギルドに今日中に届けなければいけないのです。
 こないだルイーダの酒場に届けたばかりなのに、
 また変更されちゃったし……。ぶつぶつ。」

「お、お前は、神殿公務員か!?」

俺は呆れたが、確かにディートはタダの賢者ではない。
彼は『悟りの書で転職して賢者』ではなく、
『生まれた時から既に賢者』であった。

「アクシズだって、似たようなモノでしょうが。」
「まあ、『生まれた時から既に勇者』だけどな。」
「だから、今回は諦めて下さい。」

__……そういうと思って、こっちは取っておきを用意しているんだ。

俺は一枚の書類をディートに見せ付けた。
「何ですか。ソレ?」
「10000G掛かった。」
「ま、まさか!?」
「お前の親父さんに、貸し出し念書をもらったんだよ。」

何の貸し出しって、もちろんディートの。

「ア、アクシズ。父上に賄賂使って、僕を買収したんですかぁぁぁぁ!?」

「え〜っと、内容読むぞ。
 息子ディートの貸し出し期間は一週間。
 延滞料金は一日につき100G。
 不在時の仕事はきっちり残しておく。
 たとえ旅の途中で死んだとしても、
 こちらは一切の責任を負わない。
 ……と、書いてある。」

……け、結構、厳しい内容だな……。
俺もしっかり金取られたし……。

ディートは身を震わせ絶叫した。

「父上の、鬼いいいいいいいぃぃぃぃ!!!!」

……同情します。

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