<An Introduction>
青い着衣ゆえ、騎士のようにも見えるが、鎧はつけていない。
堀が深い精悍で整った異国風の顔立ちをしており、
無造作な緋色の髪は、光の加減で銀にも輝く。
彼の名は『アクシズ』。
フルネームは『アクシズ・クライン』。
年齢は20歳くらいであろう。
腰に下げているためか、剣は見当たらない。
彼の行く先は『王都ロマリア』。
美と水の都である。
<1>
「噂どおりの方ですわね。本当にいい男ですわ〜♪」

ロマリア王城、謁見の間。
王妃が感嘆のため息を漏らす。

周囲を見回してみた。
やっぱり王はいない……。

「陛下のご依頼により参ったはずなのですが……。」
期待はしてないが、一応聞いてみる。
「陛下はちょっと事情がありまして、今『謁見の間』に来られぬのです。」
「事情?」
おい、またか?
ここの王のギャンブル好きは俺も耳にしていたが、もはやここまでとは……。

俺はガクッと頭を垂れた。
「ああ、落胆しないで下さいませ!」
王妃が慌てて俺を制する。

「今回の依頼は私からのものなのです。
 先刻、アリアハンから一通の手紙が届きました。
 内容は、近々アリアハンからこちらへ勇者が訪問するとのこと。」

「勇者?」
「そうです。」

アリアハンといえば、勇者オルテガのいる国だ。

「しかし、勇者オルテガは確か10年前に崩御(死亡)なされたはずでは……?」

「娘だそうです。」
「娘?」

お、女の子に闘わすのか!?
あの国は!!

「今回の依頼は『バンパイア』退治なのですが、
 バンパイアとは生娘の生き血を好むものと聞いております。
 アリアハンからの勇者に頼もうとも思ったのですが、
 勇者といえども若き乙女となれば……。」

……それはわかる。あまりに(その乙女の勇者が)危険すぎる。

「それで、男性の貴方にご依頼申し上げたのです。」
と言って、王妃は頭を下げた。

__アリアハンという国はどうもこういった慈悲がないらしい……。

とりあえず、断る理由もないので引き受けたが……。

「あ、アクシズ様。
 よろしければ、私の部屋に参りませんこと?」

熱っぽい瞳で王妃は俺の顔を見た。
な、何考えてんだ?

「いえ、ご遠慮しときます。」

__前言撤回。ここにいると俺の貞操のほうが危険だ……。

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