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「とりあえず、夜まで待つか……。」 相棒の『ディート』も実家の事務処理でいない。 この仕事の話をもってきた『エルマ』も、さっさと次の場所に行っちまったみたいだし、 『エビル』の奴は、はた迷惑な魔王バラモスに姿が似ているから しばらく下界には降りられないだろう。 __今回は俺一人だ。 勇者オルテガに娘がいるとは思わなかったが、 まさか勇者の子供というだけで戦闘に狩出すとは、 よほど人手が足らないのか、それとも……。 まあ、コノ場の安全だけは確保してやらないとな。 __そうこうしてる間に、あっという間に夜になったな……。 幸い、噂のアリアハン勇者一行は姿を見せなかったらしい。 一応、奴らの『巣』を見つけておくか……。 俺は、松明をかざし森の中に足を踏み入れた。 ぽちゃん……。 __水滴の音? この近くに泉なんてあったか? そういえば、この辺のバンパイアは何故か湿地帯に出現することが多い。 足音を立てずに、一歩一歩近づいて行く。 ちゃぷん……。 水滴の音は段々大きくなっていく。 やっぱりココか? __少女? 期待は裏切られた。 入水中の少女が生まれたままの姿で一人いるだけだった。 待てよ? 少女だって!? 何でこんな夜中に少女が……。 ぱき!! 考える間も与えず、俺の足音が鳴った。 少女が振り返る。 直ぐ目を逸らしたかったが逸らし損ねた。 少女と目が合う。 段々頭が混乱してきた。 きっと、神に祈りたい気持ちってこういう場合だと思う……。 「きゃあああああああああああ!!!!」 少女の悲鳴が上がり、思いっきり水を浴びた。 「誤解だ〜〜〜〜〜!!!!」 「いやあああああああああああ!!!!」 しかし半泣き状態で取り乱す彼女の後ろに奴らは現れた。 バンパイア!! それも1匹や2匹じゃない。 黒い点……。それが全部そうだとしたら……。 腰の長剣を引き抜いて身構える。俺一人だったらなんとかなるが……。 「え?」 少女は俺の目線に気が付き、後ろを振り向いた。 「何してる!!」 俺はとっさに彼女の手を掴んで、泉から引き上げた。 自分の外套を外し、彼女に被せる。 「何やってる、早く逃げろ!!」 正直、ここにいられるとお荷物なんだ。 彼女の容姿を見てもバンパイアに狙われそうな要素の塊だとわかる。 不意に羽織らせた外套の隙間から整った右手が差し出された。 「ギラ!!」 爆炎が上がり、呪文の炎が次々にバンパイアを飲み込んでいく。 次の瞬間、大量の氷の雨が降ってきた。 敵の数体が一斉に『ヒャド』を放ったらしい。 とっさに彼女を庇って避けたが、数本腕に受けてしまう。 運良く、人5人分位の小さな洞窟が見つかり、そこに隠れることとなった。 しかし、不覚だったな……。 |
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