勇者というのは、普通『魔王討伐』が主流だ。 ……だが、『俺』の場合は普通ではなかった。 はっきり言って、俺には『勇者』という言葉は似合わない。 最初に、敵であるはずの魔物に命を救われ、事の真相を知り、 いきなり最良の師匠がついてしまった。 これでは俺の場合、成長も大河劇もあったものじゃない……。 戦闘方法も俺の方が複雑になってくる訳で……。 |
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話は、俺が15歳の頃に遡(さかのぼ)る……。 先ずは、普通でない俺の生い立ちを説明しようと思う。 俺は10歳の時、理由は解からなかったが、 父・勇者サイモンから出国を余儀なくされ、 御付きの兵士と共に『サマンオサ北西の教会の旅の扉』を通って、 知らない土地へ出た。 兵士は直ぐ力尽きてしまったが、 その後俺はエビル(バラモスエビル)に助けられ、 『竜の女王の城』に行くことになる。 2年くらい城で滞在していたが、 それから『ダーマ神殿』に送られた。 神殿で『大神官バサラ』の次男である、『賢者ディート』と仲良くなり、 共に呪文の勉強や武術に励んでいたのだ。 呪文ではディートに敵わなかったが、 力や剣術は俺の方が圧倒的に上になっていた。 外で実践を行っても、相手になるような敵が無く、 俺もそろそろ暇を持て余していた頃だった。 「暇か?」 神殿内で黙って『鋼の剣』を磨いている俺を見つけ、 大神官バサラが声をかける。 「お主は、確かに強い……。 だが、世界にはもっと強い輩(やから)がいるぞ?」 「だったら、ソイツを紹介しろよ……。 ココにいたんじゃ暇すぎて鈍(なま)っちまう!!」 俺は退屈すぎて気が立っていた。 まあ、要するに反抗期ってところだろうか。 自分で言うのも何だが、 その頃の俺は生意気な世界を知らないガキだった。 「ほぉ? よく言ったの。 お主も勇者じゃて。そろそろ外へ出さねばいかんかの〜♪」 ニヤニヤしながら、大神官が面白そうに俺を見る。 ……? な、何だ? こういう時の大神官は必ず何かを企んでいる……。 「ついて来なさい。」 __? 俺は不審に思いながらも大神官バサラの後を追う。 「外にいる魔物達が何故、町や城に入ってこないのか考えた事があるかの?」 「いえ。ありません。」 「魔物達は人間より遥かに強い。 いくら強固な外壁で守っていても奴らは壊せば終りじゃ。 一般的に魔物達は夜行性。 皆、安心して夜眠れんのが普通じゃ。」 大神官は、自分の玉座の前に立って俺を見た。 「バサラ様。転職希望者達がお待ちです。」 慌てた他の神官達が、大神官を見つけて駆け寄ってくる。 「なぁに。ワシにだって衣食住する権利はあろう? 直ぐ終わるから、今は待たせておきなさい。」 彼らを制して引かせた後、大神官はため息をついた。 「偉いと色々大変じゃ。ろくに食事も出来んし、寝かせてもらえん。 じゃ、行くとしようかの。」 そう言って、玉座の後ろにある『ボタン』を押す。 すると玉座の後ろに、地下へ降りる階段が現れたではないか!! 「だ、ダーマ神殿にこんな隠し階段が……!?」 「企業秘密じゃ。 アクシズ。お主にしか、紹介せんよ。」 __俺だけ? その未知なる階段は、15歳の俺の好奇心をくすぐるには十分だった。 |
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