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__予想通りだったかもしれない。 心が締め付けられて痛い。 サマンオサで、『ガイアの剣』をアクシズに渡してから、 彼は私に冷たくなった。 ……嫌われたのかもしれない。 そんな不安と絶望が、私の心を支配して、とても苦しかった。 だけど、一番苦しいのはアクシズだから……。 胸から込み上げるものがあって、口を手で塞ぐと涙が溢れた。 心から彼を愛していると、この時初めて理解出来た。 __ずっと貴方の傍に居たい。 独りじゃないよ……って、言ってあげたい。 だけど……。 励ましたいのに、彼に励まされたい自分が居る。 クライン家の屋敷の一室で、泣き腫らしていると、扉をノックする音が聞こえた。 慌てて涙を拭き、急いで扉を開ける。 外に居たのは執事・ドンクさんだった。 礼をすると、彼は部屋に入る。 真っ赤になった私の目に気付いたのだろう。 ドンクさんは、優しく微笑むと、静かに話し始めた。 「アイリ様。 勇者オルテガ様が崩御なされた事、お悔やみ申し上げます。 アクシズ様には申し上げておりませんでしたが、 勇者サイモン様は、サマンオサ国民の為に自らを犠牲にしたのです。 丁度、オルテガ様が崩御なされた時期の事でした。」 __それって……? まさか、ドンクさんは、勇者サイモンが死ぬかもしれないと知っていたの? ……驚いたけど、でも……。 佇(たたず)んだまま動かない私に、彼は更に語り続ける。 「サイモン様は全てを承知の上で、アクシズ様を出国させました。 そして、何が起ころうとも自分の所在を伝えるな……との事でした。」 「どうしてですか?」 問うと、彼は寂しそうに微笑む。 「きっと、アクシズ様に独りだと思わせたくなかったのでしょう。」 「私。 彼を傷つけました……。」 余りに悔しくて、唇を噛むと、涙が零れる。 でも、ドンクさんは首を横に振った。 「いずれ分かる事です。 その相手が、貴女で本当に良かったと思っています。 アイリ様。 アクシズ様を宜しくお願いします。」 「でも、私……。」 他人行儀に振舞ったアクシズの態度に、 絶望を感じていた自分を思い出すと、少し怖い感じがした。 「こんな時に、勇者様が怖気付いてどうするのですか? アクシズ様は、自分に自信を失っておられるから、 大切な貴女を遠ざけようとなさるのです。 言ってあげて下さい。 アクシズ様を必要だと……。」 勇気付けるように、ドンクさんは私の手を握り締め、澄んだ瞳で見つめてきた。 意を決すると、大きく頷く。 「ありがとうございます。ドンクさん。」 私、もう、迷いません……!! |
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