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「こんな嬢ちゃんが、勇者オルテガの娘だって?」

辺境の地にある魔物ハンターギルド本部へ行き、
登録中のアクシズを呼んでもらう。
こうでもしないと、神出鬼没の彼には出会えないから。

元締めの男が、私をジロジロと見る。
笑われるかと思って覚悟してたけど、実際はそうではなかった。

「ふ〜〜〜〜む。
 こんな綺麗なお顔してたら、何も勇者なんかにならなくたって、
 どこぞの貴族夫人にでもなっておけば良かったのに。
 あ、アクシズも元は貴族だったな。」

__え?

彼の言う意味が理解できず、唖然としていると、
リオに肩を叩かれ、私の耳元で囁いてくる。

「良かったですわね♪
 アイリとアクシズ様が『お似合い』だってことですわよ。」

「そ、そうなの?」

「まったく、アイリったら。
 とっても可愛い顔してるんですから、もっと自分に自信持ったらどうですの?」

窘(たしな)められて、更に呆然となってしまう。
遣り取りを見ていたのか否か、元締めの男は机を叩くと、笑顔になった。

「……よし!!
 アクシズを呼んでやろう。
 アイツはSクラスだから高いが、嬢ちゃんなら、特別に無報酬扱いだ♪
 どうせアクシズのコレなんだろ?」

小指を立てて、彼はニヤリと口の端を上げる。
またしても意味が解からず、唖然としていると、リオが大きな溜め息をついた。
同じように小指を立て、険しい顔で私に詰め寄ってくる。

「まったくもう、アイリ。
 コレは、アクシズ様の『彼女』。
 『恋人』って意味ですわ!!」

「え、……え?」

「ははは。
 えらく純情だな!!
 そりゃ、アイツも惚れるわ!!」

大笑いする元締めの男と、両拳を腰に当て、更に溜め息をつくリオ。

__でも、こんな状況で彼に逢うのは、本当は怖い……。

嫌われるかもしれない。
もう、アクシズに逢えないかもしれない。
そんな不安が、私を襲い、暗い淵へと追い込み始めていた。
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『DQ3』外伝CONTENTS