どうして、こんな思いまでして、私は闘っているのだろう。
本当は、助けて欲しい。
ずっと、傍に居て欲しい……。
<1>
「アイリ。
 辛いだろうが……。」

クリスが語りかけてくる。
『ガイアの剣』を布で巻きながら、私は彼女に向き直り、無理に笑顔を作った。

「大丈夫。
 私は大丈夫だから……。」

思えば、こんなに彼を好きになるなんて、思わなかったのかもしれない。
こんなに切なくて、辛くて、苦しくなるなんて、考えもしなかった。


丁度、オリビアの岬に付いてから二時間位前。
この『ガイアの剣』があったのは、
オリビアの岬から見える小島、『魂封じの牢獄』といわれる場所だった。
石畳の真ん中に下りの階段があり、そして……。

『私はサイモンの魂。
 私の遺体の場所を調べよ。』

浮かばれぬ魂が私達の心に語りかけてきた。
魂は勇者サイモン。
もう1人の勇者・アクシズの、たった一人の父親。

魂に言われた通り、白骨化した遺体の場所を探す。
すると、鞘に収められた一振りの宝剣が見つかった。
徐に鞘から抜くと、刀身が冷たく輝く。

__これは『私の剣』じゃないんだ……。

剣は使い手を選ぶ。
少し残念だったけど、よくある事だから、素直に割り切れた。
でも、どうしても割り切れない事があった。

__アクシズはずっと信じて待っていた。

辛い。
心が痛い。
でも、アクシズはもっと辛い。
彼には母親も無く、父・サイモンを失った今、孤独の身となってしまった。

__彼の傍に居たい……。

同情している訳じゃない。
辛いのは彼なのに、すがりたい気持ちになってしまう。


「アイリは本当にアクシズが好きなんだな。」

鞘ごと『ガイアの剣』を抱き締めて俯く私に、クリスが微笑みかける。
だから、素直に頷いた。
次へ
これの前の話『EPISODE_[5]』へ
『DQ3』外伝CONTENTS