誰でも、初々しかった日がある。
この2人の場合もそうであった。
<1>
「今日から、アイリが女王様じゃ……!!」

地上界。
ロマリア城。

謁見の間に、たまたま挨拶に来ただけの勇者アイリを、
ロマリア王が強引に引き止め、
無理やり女王にしてしまったのである。

元々、美しい容姿のアイリが王族の女性らしい紅いドレスを身にまとい、
武器を持たず慎ましやかにしているものだから、
貴族の男達の間で注目の的になっていた……。

__どうしよう……。

玉座に腰掛け両手を膝の上に重ね、じっとしているが、
流石にコルセットがキツイのか、玉座から立ち上がる。
だが、こういった状況に慣れているロマリア王妃が、
彼女を窘(たしな)める。

「女王様、いけませんわ。
 はしたない……。
 殿方も見ておられるのですわよ?」

「違います。
 ちょっと外出に……。」

王妃に向かって抗議をしたが、もはや再び玉座に座る気はなく、
兵士達が呼び止めるのも聞かず、アイリは城内から出て行った。

__とにかく、王様を探さなくちゃ……!!

私は勇者だし、魔王バラモスだってまだ倒してない……。
ドレスの裾を摘み上げ、アイリは不機嫌な表情で城下町へ出る。

しかし……。

「あ、女王様だ!!
 ご機嫌麗しゅう……!!」

国民に見つかり、
アイリの周囲に人だかりが出来てしまったではないか……!!

彼女は驚愕し、狼狽したが、隙をついてその場から逃げ出し、
外路地に身を隠した。

肩で息をする。
周囲を見回すが、完全にまいたのか、誰もいない。

アイリは、その場に座り込み、大きな溜め息をついた。
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