誰でも、初々しかった日がある。 この2人の場合もそうであった。 |
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「今日から、アイリが女王様じゃ……!!」 地上界。 ロマリア城。 謁見の間に、たまたま挨拶に来ただけの勇者アイリを、 ロマリア王が強引に引き止め、 無理やり女王にしてしまったのである。 元々、美しい容姿のアイリが王族の女性らしい紅いドレスを身にまとい、 武器を持たず慎ましやかにしているものだから、 貴族の男達の間で注目の的になっていた……。 __どうしよう……。 玉座に腰掛け両手を膝の上に重ね、じっとしているが、 流石にコルセットがキツイのか、玉座から立ち上がる。 だが、こういった状況に慣れているロマリア王妃が、 彼女を窘(たしな)める。 「女王様、いけませんわ。 はしたない……。 殿方も見ておられるのですわよ?」 「違います。 ちょっと外出に……。」 王妃に向かって抗議をしたが、もはや再び玉座に座る気はなく、 兵士達が呼び止めるのも聞かず、アイリは城内から出て行った。 __とにかく、王様を探さなくちゃ……!! 私は勇者だし、魔王バラモスだってまだ倒してない……。 ドレスの裾を摘み上げ、アイリは不機嫌な表情で城下町へ出る。 しかし……。 「あ、女王様だ!! ご機嫌麗しゅう……!!」 国民に見つかり、 アイリの周囲に人だかりが出来てしまったではないか……!! 彼女は驚愕し、狼狽したが、隙をついてその場から逃げ出し、 外路地に身を隠した。 肩で息をする。 周囲を見回すが、完全にまいたのか、誰もいない。 アイリは、その場に座り込み、大きな溜め息をついた。 |
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