「親分。悪いけど、抜けさせて頂きます。」

子分の一人が別れを告げる。
まあバハラタで、人攫(さら)い行動に走ってしまった俺の責任なんだが……。

俺か?
俺は、カンダタ。
大盗賊首領だ。……元な。
今現在は、逃亡中の身だ。
<1>
「珍しいじゃないか。
 カンダタが、人攫いなんてな。」

偶然、通りがかったアクシズに声を掛けられる。
面倒くせえなあ……。

「俺も、やりたくてやったんじゃねえ!!
 ある意味、人助けだったんだぞ!!」
「わかった、わかったから。」
アクシズの奴、明らかに顔が笑ってやがる……!!

「それもこれも、勇者アイリが現れてから、俺の人生が狂いやがったんだ。
 あの、姉ちゃん可愛い顔して強えのなんのって……。
 ぐお!!」

言ってる最中に、アクシズの拳が俺の顎にヒット!!
何か、お前に怒らせるようなこと言ったか?
俺が目を白黒させていると、アクシズが強い口調で言う。

「……今後一切、俺の前で『彼女』の話はするな!!」
「同じ『勇者』だから、ライバル視してんのか?」
俺が言うと、アクシズは目を逸らす。

……いや、違うか。
ここから先は聞いても無駄だ。
こいつ、絶対答えねえ。

「でよお。
 何で、こんな所までお前が来てんだ?
 依頼か?」
俺が、話を切り替えると、アクシズは嘆息した。
「今回は依頼でも、ギルド依頼じゃない。
 大神官バサラから調査依頼されている。」
「あのオッサンの依頼じゃ『無償』じゃねえか……。
 お前さんもよくやるよな。」
「恩人だからな。
 一応……。」

そんな、しけた顔すんな。
そういえば、アクシズの故郷って『サマンオサ』だったよな。
『ダーマ神殿』っていえば、丁度地球の裏側みたいなもんだ。

「暇だから、俺も行っていいか?」
俺が、問うとアクシズの奴、露骨に嫌そうな顔をしやがった。

__こうなったら、意地でもついて行ってやる……!!

「でも、カンダタの『欲しそうな物』は無いと思うぞ?」
「い〜〜や!!
 絶対、有るね……!!!!
 お前の行く所は、大抵『宝』の山だ!!!!」
「それは、『アイリ』の方だと思うんだが……。」

__?

「お前、今、あの勇者の姉ちゃん『呼び捨て』にしなかったか?」
「……。」
黙っちまった。
まあ、少なくとも『ライバル視』では無いと解かった。

「で、何処行くんだ?」
俺が聞くと、アクシズは面倒くさそうに答えた。

「ジパングだよ。」

そりゃまた、辺境の地へ、ご苦労さんなこった……!!
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