何も持って行く必要などない!!
愛情表現のみでいく!!
<4>
瞬間転移呪文『ルーラ』詠唱で、リーザス村に到着。
周囲には目も暮れず、アルバート邸へ直行!!
彼女の部屋の前。
そして、俺の目の前には、マイハニー、ゼシカが居る!!

驚愕し、狼狽するゼシカの腕を強引に掴み、引き寄せ抱き締める。
呆然と佇(たたず)むと思いきや、気丈にも語りかけてくる。

「……ク、ククール。
 どうしちゃったの?
 熱でもあるの?」

ラプソーン討伐時、
長旅になったとたん手を出さなくなった俺を、
不審に感じていたのだろう。
もっとも、当時の彼女は、エイトの方に気があった筈だ……。

「……。」

額に、彼女の細い指が触れてくる。
同時に、俺の掌も彼女の柔らかい頬に触れていた……。
引き寄せられるように、唇が重なる。

「……!!」

驚愕したゼシカが、俺の胸を突いて離れようとするが、
逃がさぬように腕に閉じ込める。
嘆息したが、彼女は背中に手を回してきた。
そのままの状態で、囁くように語り掛けてくる。

「お腹空かない?」

……あんまり、ロマンチックな会話じゃないな。
でも、そこがゼシカの『いいところ』だけどな。
苦笑しながらも、素直に頷く。
正直、朝から何も食べてないし……。
ついでに問うてみる。

「ひょっとして、初めてだったのか?」

頬を紅潮させ、素直に頷くが、
次にゼシカは俺の胸倉を掴んで詰め寄ってくる。

「それじゃあ、ククール。
 アンタは、『初めてじゃない』ってことね!!?」
「ば、馬鹿……!!
 確かに俺は、口だけは達者だけど、実際に実行した覚えは無い!!」
「それならいいけど……。」

ホッと、豊かな胸を撫で下ろし、
彼女は笑顔になる。
ふと窓の外に視線を移すと、夕方に差し掛かっている。

「どうしたの?
 ウチのメイドの料理は絶品よ♪」

「ああ。
 お言葉に甘えさせてもらうよ。」

部屋を出て、笑顔で階段を下りるゼシカを見送ってから、
俺も階段を下りた。

たまにはこういうのも、悪くない。
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