俺は『宝石』を持って行くことにした。

要するに、レディに対する礼儀ってやつだ。
<4>
瞬間転移呪文『ルーラ』詠唱で……と、
思ったが『宝石』といえば、『守りのルビー』くらいしか思いつかない。

__何とか誤魔化せばいいか……。

取りあえず、先にサザンビークのバザーに寄って、
プレゼント用に包んでもらうが、
店員のお姉さんが不思議そうに首を傾げる。

「ククールさん、いらっしゃいませ♪
 あら?
 ホワイトデーのプレゼントで来られたエイトさんと、
 同じ物を買っていかれるのですね。」

__は……!?

訳が分からず唖然としていると、青年に声を掛けられる。
……青年と言っても、随分ポッチャリしているが……。

「ポッチャリとは失礼な!!
 確かお前は、エイトの仲間の……。」
「ククールだ。
 いいかげん、他の連中の名前を覚えろ。
 それから、俺の思考を読むな!!」
「相変わらず失礼な奴だ。」

どっちが!!!!

「何しに来た?」

面倒くさそうに問うと、
奴は『偽物アルゴンハート』を出してきた。

「ソレがどうしたんだ?
 チャゴス王子様。」
「い、いや……。
 父の教育が厳しいので、コレが原因だと思って、捨てようと思っていたのだ。」

『ヤンガスの教育』(山賊流)は、まだ続いていたらしい。
王子が『教育されている理由』は、他にあるんだがな……。

「そうだ!!」

思いついたように手を叩き、
チャゴス王子は俺に『偽物アルゴンハート』渡す。
強引に。

「俺に、捨てて来いと?」
「違う。
 お前にやろうと思って。
 庶民には手の届かぬ品だろう?」

__……近付きたくも無い品物だがな。

手の中にある『偽物アルゴンハート』を、奴に向かって投げ返す。
思わず受け止めたものの、目を白黒させ、王子は硬直する。
そして、俺に抗議。

「何をする!!!!
 危ないじゃないか!!!!」
「……んなもん、自分で捨てて来い。」
「ふん!!
 もう『貴様』には頼まん!!」

おい、おい。
『お前』から『貴様』に変わってるぞ?
ふと、カラスの鳴き声がし、
天を見上げると、星が瞬いている。

やれやれ……。
これじゃ、アルバート家も閉まっている。
あの家は、夜は入れてくれないんだ。
夜になったという事は……。

「お〜〜い!!!!
 僕は、この城の王子だぞ!!!!
 入れてくれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

もちろん、サザンビーク城も閉まっている訳だ。
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